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軽量盛土工法の原点から今日までの歩みを振り返って・・・
FCB工法とEPS工法は、1980年代後半から日本で普及・発展してきた軽量盛土工法です。当社の創業メンバーは、この工法の草創期から携わり共に歩んで来ました。そのため、この工法のメカニズムに深く精通し、そのメリットを活かすキーポイントを誰よりも熟知していると自負しています。このコーナーでは、これまでの実績や歩みの中から、軽量土との印象深い出会いとなった事例や軽量土の優れた耐震性能や驚きの海外施工例など、さまざまなエピソードをご紹介します。
FCB工法との初めての出会い(京葉道H地区)
道路公団初めてのFCB工事。当時計画された東名松田厚木間の6車線化改築や名神改築、それに京葉道路、それらの拡幅工法としてFCBが着目され、全国を代表して京葉道路H地区においてFCB、EPSについて試験工事を実施しました。発注は当時の千葉工事事務所、調査を(株)建設企画コンサルタント、工事を麻生フオームクリート(株)が行い、私が(株)建設企画コンサルタントの管理技術者でした。調査と設計から対応し、施工の度に直接現場へ通い管理をしました。参画者はみな初めての試みで興味津々だったことを覚えています。施工後は計測データの取り込みのため、会社への出勤前に現場へ行き、データ回収と現地確認を行いました。
以後この成功を踏まえて、試験研究所(当時)での数年間の試験研究業務を経て、設計施工指針案を立案して現在に至っています。今も現地では大きな問題もなく使命を果たしています。
東日本大震災でも実証されたFCBの耐震性能(三陸山田道路)
- 国交省三陸国道での新規FCB打合せの後、山田道路を訪ねました。(写真撮影は2015年7月)
- 未曾有の震災で想定外の外力と津波に見舞われながらも、大きな損傷もなく、震災直後から地域の復興に寄与している山田橋は、FCBの耐震安定性を示した貴重な現場であると言えます。
道なきところに道を築くFCB(急峻山岳道路)
- 中国地方の急峻な山地を貫く山岳道路です。
- 当初計画は補強土壁工でしたが、主材料のコンクリートスキン等重量物資機材を運搬する工事用道路が確保できず、方押し施工と簡易な工事用進入路で施工可能なFCBへ設計変更しました。
- 現地調査と設計を麻生フオームクリート㈱で行い、最もクリティカルとなる上部区間をFCBで施工しました。
- 当該地は急峻であり、工事用道路は重量物運搬には困難な状態でした。それも設計変更によりクリアしましたが、セメント運搬がネックとなりました。平地側起点と上部の施工地の2箇所にサイロを設け、荒れ地走行が可能な車両で主材料を小運搬しました。
- FCB型枠は、作業員の背負子による小運搬と簡易索道で徐々に能率を上げ、厳しい工期要件でしたが工期内に無事竣工しました。
軟弱地盤上橋台アプローチ部の維持管理コスト軽減(日沿道鶴岡)
- 厚い軟弱地盤上の高速道路で、盛土流用が可能な切土工区のない特殊な条件化も加わり、橋台背面に沈下・側方流動対策としてFCBが適用されました。
- ジャンクションを挟み複数の橋台が位置するため、数万㎥規模のFCB盛土でした。
- 計画地には、本線と国道やJRが交差するため、沈下軽減に加え引き込み沈下や側方変形への対処としてFCB工法が選定されました。
興味深い海外でのEPS施工例(ソルトレイクシティの高速道 I-15線)
- アメリカの主要高速道であるI-15
- ソルトレイクシティ冬季オリンピックを控え、軟弱地盤の圧密沈下軽減と、周囲への側方流動影響を軽減するためEPSで盛土されました。
- 壁体はコンクリート製加圧矢板。
- EPSブロックは日本のサイズ(0.5×1.0×2.0m)に比して3~4倍大きいブロックを使用していました。
- 工期制約もEPS採用理由の一つとなったそうです。
- アメリカでも地すべり地上の盛土や不安定な斜面上の盛土、湖沼地の沈下軽減としてEPSが多く利用されています。
思い出深い「第3回EPS Geofoam国際会議」
- 第1回のノルウェー、第2回の日本に続き、2001年に第3回の国際会議がアメリカ ソルトレイクシティで開催されました。
- ノルウエーのTor Erik Frydenlund氏、オランダのMilan Duškov氏、アメリカのDawit Negussey教授、日本の小職(EPS開発機構事務局)が数年前から準備しました。
- 9/11テロに見舞われ、開催が一時たいへん危惧されましたが、無事に開催されました。
写真は左から
- 筆者(佐藤嘉広)
- Steven F.Bartlett, University of Utah, USA
- Dawit Negussey, Syracuse University, USA
- Tor Erik Frydenlund, Public Roads Administration, Norway
- Hans Tepper, Stybenex, the Netherlands
- Roald Aabøe, Public Roads Administration, Norway
- Milan Duškov, IE Delft, the Netherlands
EPSの意外な施工例(海辺に浮かぶ高級住宅)
- USAシアトル郊外の湖沼地にある高級住宅街にある浮体式家屋です(浮体構造にEPSを使用しています)。
- 平日は裏口から通路を経て駐車場、そしてオフィスへ。休日は表側水面からボートやヨットで余暇を楽しむそうです。日本人とは生活様式が正反対と言って良い習慣であり、玄関の配置も想定外でした。
- ノルウェー浮体橋と同様に、わが国ではなかなか実現しない軽量土の夢の適用法です。